Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

褒める先生と叱る先生(2007年 執筆)

f:id:Nayunayu:20200528232917j:plain

(2020.5.28 リライト)

 今から13年前、私が31歳の時に書いた文章です。子どもは褒めて伸ばすという社会的風潮を疑問視し、「褒めるとは何なのか」ということを問いかけた時期です。そして、褒めるということを勉強し、実践を通して自分なりにある程度まとめられたので、この当時の自分の記録として書き残したものです。

 その当時の私の精一杯の文章なので、手直しなどせずにありのままを紹介します。この記事を読むと、褒めることも叱ることも、少し難しく感じられるようになります。

 

人は褒められたい

 人は誰だって褒められれば嬉しく、叱られれば悲しさ、苦しさ、そして反省が促されます。褒められれば嬉しいのは自然で、なるべく叱られたくないというのも自然です。叱られることが専門で好きという人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は褒められたいものです。 

 教師は子ども達の成長を願い、喜びの中で学びを育みたいと願うから「褒めて伸ばす」という実践がもてはやされます。 

 教師が子ども達の良さを見つけ、それを褒めることで自覚させ、子ども達がすくすく育っていけるような、そんな教室を夢見ます。 

 しかし、それは相当の技量(教師の力量)がなくてはできません。たいていは、叱ることを中心に指導が成されていきます。叱ってばかりいる自分に嫌気がさしたって、それ以外の方法を知らなければしかたありません。

  かくして、多くの教室ではお説教という名の有り難い話が多くなされていきます。

 

叱るのはダメなのか?

 さて、世の中は「褒めることが善」で「叱ることは悪」だというような風潮がありますが、果たして本当でしょうか? 

 

 家庭訪問に行けば、保護者の皆さんから「先生、うちの子を褒めて伸ばしてください。」とは要求されません。「先生、びしばしやってください。」「悪いことをしたら、しっかりと叱ってください。」と要求されます。要求されたからと言って、その通りにすれば問題ですが、悪いことをしたらしっかりと指導してほしいというのは一般的な保護者の願いです。

 

 それは、叱ることによって、子供の成長にプラスとなる、正されるということでしょう。子ども達は、純粋で素直ですが、生まれながらにして天使のような清らかな子はいません。みんな、躾や教育を受けて、何が良くて何が悪いか、どのように行動するのが望ましいのかを学んでいくのです。 

 ですから、悪いことをすれば、程度をわきまえながらしっかりと叱るというのは大切なことです。

 

叱るとは何か?

 叱るというのは、大変なエネルギーを必要とします。相手のことを想えばこそ、将来を見据えてこのままじゃあいけないと思うからこそ、心を鬼にして叱るのです。誰も、好き好んで叱っているのではありません。例え、自分が嫌われたとしても、相手のために言うべきを言う、叱るべきは叱るという優しさが「叱る」という行為を生み出します。

 優しさとは厳しさです。

 将来に向けて、直しておかなくてはならないことを厳しく指導することが、将来を幸せに生きるために必要なのです。もう少し、叱るということに価値をおけるような社会になっていかなくては、日本の将来が危ぶまれます。

 

 社会人になって、上司に叱られたくらいでやめてしまう若者がいるという話も聞きます。このまま褒めることを美徳とした優しい社会が続くようでは、どんどん脆弱な若者が増えていきます。

 

子ども達が望む先生

f:id:Nayunayu:20200528234244p:plain


 褒めてばかりの先生、優しいだけの先生は、実はあまり人気がありません。逆に、厳しさ一辺倒の先生も子ども達の心を掴むことはできません。子ども達が望む先生は

 ~普段は優しいけど、叱ると怖い先生~

  普段は優しいというのですから、およそ8割~9割は優しい。残りの1~2割に厳しさがある。そういう先生が、クラスを温かく、そして厳しく統率していけるのです。

 何でも許される無法地帯を望む子は、ほとんどいません。

※ごく稀にいますが、その子は心の闇に飲み込まれているので、違うアプローチが必要です。

 

 また、規則に縛られて自由の許されない教室も辛すぎます。

 担任は、バランス良く、教室の雰囲気の解放と引き締めを行いながら学級を経営し、その経営が子ども達の学習環境を創り上げ、その学習環境が子ども達を健やかに成長させるのです。 

 子ども達は、恐ろしく飽きっぽい性質を持っています。ちょっとした壁、抵抗を乗り越え、自分がどんどんよくなっていく教室に喜びを感じるのです。 

 

叱ってくれる人

 昔は近所のおじさんやおばさんも目を光らせ、子ども達が悪いことをしたら叱ってくれたものらしいのですが、それではご近所つきあいに支障がでるのか、叱る行為自体ができなくなってしまったのか、最近はそのような話は聞かなくなりました。その結果、子ども達を叱るのは、もっぱら親か学校の先生ということになっています。

 

 教師は教えるプロ、教え育てるプロですから、勉強を教える以外にも叱り方、ほめ方も素人とは違う視点、子ども達を成長させるという視点を持って、プロらしく行う必要があります。素人が叱っても、先生が叱ったも同じというのでは、教師という職業を全うする者として寂しいと思います。