(2020.6.06 修正)
前々任校は小規模な学校で、赴任した年に5・6年生の複式を担任しました。
1回目の体育の授業で、体育館をとりあえず3周走らせました。
(1周、たぶん50メートルくらいかな?)
びっくりしました。
全員、ハアハアと息を切らし、
「先生はスパルタだ!」
みたいなことを口々に言うのです。
世の中に、これほど体力のない子ども達がいることに衝撃を受けました。
そんな体力のない子ども達を受け持ったときのマット運動のお話です。
愛のある評価基準を設定
高学年のマット運動の中の最高峰は「倒立前転」です。
逆立ちして、一瞬止まり、そのまま前転する技です。
ところが、「逆立ち」ができません。
逆立ちといっても、「壁倒立」です。
壁に向かっての倒立です。これが全くできません。
6年生の女の子が、すっかりやる気がなくなるどころか
「も~マット嫌いなんだって!先生は無理矢理やらせてひどい!」
と、ごちゃごちゃとクレームもつけてくるありさまです。
そこで、
「わかった、わかった。じゃあ、壁倒立ができたらマットはAをあげるよ。」
と評価基準(単元別)の内容を変えて、一点突破できればとにかくAだと伝えました。すると、
「ほんと?倒立前転やらなくていいの?壁倒立か~、できそうなんだけどな。」
と、いきなり目が輝き始めました。
小さな学校なので、保護者がよく来校します。それで、その女の子のお母さんとたまたま話をしていましたら、お母さんが
「うちの子、最近、逆立ちに目覚めたようで、なんか部屋でバタバタ音がすると思ったら、布団の上で、ずーっと逆立ちの練習をしているんです。」
と言うのです。
私は、事のあらすじを説明し、「それはいいことですね。」と伝えました。
お母さんも、
「そんなに逆立ちに夢中になる子じゃないと思ってたけど、先生が担任になってから、先生の文句ばかり言ってるけど、元気になったような気がします。」
と喜んでいました。
数日後のマット運動。
「せんせー、見て! 見て!」
と言って、みごとに壁倒立を成功させました。
「よし! Aだ!」
「やったー!」
評価はやる気と自己肯定感を高めるためにするという側面がある。
逆立ちなんて、本当はできなくたっていいんです。
他の技が綺麗にできるならAがつきますしね。
でも、一生懸命に、自分から取り組めることが見つかって、それで努力して、その努力が報われるという経験が大切なんです。
この評価の真のねらいは「自己肯定感を高める」ということです。
自己肯定感を高める評価のポイントを解説します。
1 何をすればよいか明確に分かる。
2 努力すればできそうだという内容。
3 先生は見てくれている。
4 親も見てくれている。
5 楽しい。
6 結果はできるようになると決まっている。
7 評価が可視化される(通知表)
まだありそうですが、とりあえず、上記の内容は、どの教科においても、応用が可能です。