もう、何年も前の思い出話になってしまいます。
4年生を担任した時のことです。
家庭訪問で、ある女の子の家に行きました。
その女の子は5人きょうだいの末っ子で、お母さんは「ベテランお母さん」です。
家での様子を聞くと、末っ子ということもあって、お兄ちゃんやお姉ちゃんに揉まれて強く育ち、お手伝いはするし、家庭学習はするしで、全く手がかからないということでした。ちなみに、お母さんは、お兄ちゃんやお姉ちゃんの部活やら塾やら進学問題やらで大忙しだそうです。
ですから、何も手がかからない子というのは、親にとっては喜ばしいことで、全く問題はないように思われるかもしれませんが、4年生の女の子が全く手がかからないというのは、不自然です。
きっと、なにかしらの無理をしているはずです。
「でも、まだ4年生ですから、あれ買って欲しいとか、一緒に寝たいとか、言いそうですけど、そんなのも1つもないんですか?」
と聞いてみました。すると
「そういえば、毎朝、髪の毛を縛ってって言ってくるわね。もう、4年生だから、自分でできるはずなんですけどね。忙しいから、もうそろそろ自分でやってほしいんですけど・・・。」
と言うので、とても良いエピソードが出てきたと思い、次のように伝えました。
・それは娘さんが自分から「もう自分でやる」というまで、続けてほしい。
・髪の毛を縛っている時間は、唯一、自分がお母さんを独占できる時間だから。
・娘さんは、お母さんに髪の毛を縛ってもらっている時に、愛情を感じてます。
・もう、本当は自分でできるんです。
・でも、自分でできたら、お母さんとの時間は無くなってしまいます。
・髪の毛の時間は、お嬢さんにとっての大きな財産になるはずです。
とまあ、こんな内容だったと思いますが、まとめると、「とても良いことなので、続けてください。」という事を伝えました。
すると、私の話を聞いたお母さんが、思い出したように
「そういえば前に一度、本当に忙しいから、つい、「もう自分でできるんだからやりなさい」って言ったら、「じゃあもういい!」って言って、ずっと泣いていたことがありました。」
と言っていました。そして
「先生の言うことはよく分かりました。娘がやってほしいって言う間はやります。」
と。
もう何年も前の話なので、その女の子ももう大人になっていることでしょう。
きっと、娘ができたら、同じように髪の毛を縛ってあげるんだろうな~と
勝手に想像してます。