地元の友達が帰省していたので、久しぶりに地元の居酒屋に行き、2次会ということで、飲み屋に行ったときのお話です。
若い女の子(その店の娘)が私たちの席に着きました。
彼女は、間もなく札幌で一人暮らしをするとかで、夢を膨らませています。
「私、はじめての一人暮らしだから、欲しい物だらけでお金が足りないかも。」
「それはワクワクするでしょう。で、何が欲しいの?」
彼女は、さらに嬉しそうに夢を語り始めました。
「えー、たくさんあるよー。まず、レンジ”!」
「まあ、必要だろうね。どんなレンジが欲しいの?」
「7万円ぐらいの高いレンジ! もう、いろんな機能がついててすごいんだから!」
「・・・・うーん、それはやめたほうが良いんじゃない?」
「えっ、どうしてですか?」
ということで、友人と2人で説明しました。
一人暮らしで、おそらくそれほど料理はしないでしょう(本人に確認すると、普段から料理はあまりしていないといこと)。だとすれば、温めるという機能しか使わない。他の機能は宝の持ち腐れであり、そこに投資する意味はない。
「私、掃除機はいいのが欲しいの。ダイソンの7万円ぐらいするやつ」
「それもやめたほうが良いだろうね」
「えっ、どうしてですか?」
ということで、友人と2人で説明しました。
一人暮らしだから、おそらくそれほど部屋は広くないでしょう。だとすれば、掃除もすぐに終わるし、コンセントで電源をとるタイプでも十分全ての場所をカバーできる。しかも、吸い込みの力は従来の掃除機の方が明らかに上である。3万円も出せばかなり性能の良い掃除機が手に入るよ。
「そっか・・・。何か夢がなくなってきちゃった。でも、次は良いよ! 炊飯器! 高い7万円ぐらいする圧力釜!」
とにかく7万円が好きなんですね。
「それもやめたほうが良いだろうね」
と言ったんですが、食い下がります。
「ちょっと、聞いて! 高い炊飯器は安いお米でも美味しく食べられるんだから!」
意気揚々と力説するので、友人と2人で説明しました。
あのね、安いお米を安い炊飯器で炊くよりは美味しいってことだよ。高いお米を安い炊飯器で炊くのと、安いお米を炊飯で炊くのでは、おそらく高いお米の方がおいしいだろうね。ハード面に気を取られているようだけど、ソフト面を考えていない。そして、高いお米と安いお米は、一人暮らしの1食分に換算すると、たいした額ではない。3万円も出せば、かなり性能の良い炊飯器が買えて、それで十分に美味しい。高い炊飯器が7万円だとして、差額の4万円をペイできるまでには相当な時間がかかる。
「ドラム式の洗濯機!」
「乾燥までさせるの?」
「ううん、部屋干しだよ」
「じゃあ、普通の洗濯機の方が良いだろうね」
「じゃあ、これは? 大きなテレビ」
「テレビ見るの?」
「あんまり見ない。ほとんどスマホ」
「じゃあ、いらねーだろ!」
友人もあきれてきました。
「じゃあ、これは? 大きな冷蔵庫」
「一人暮らしだから、食材を腐らすだけだろう!」
「じゃあ、じゃあ、これは? ホームベーカリー!」
「あんねー、君はきっと作らないよ」
「でも、できたてのパンを食べられるんだよ」
「作ったことあるの?」
「ない」
「だから、作らないだろうね。まあ、一回は作ったとしても、すぐにお蔵入りでしょう。できたてのパンは、パン屋さんにタイミング良く行けば食べられるから」
彼女が最初にお金が足りないと言っていた意味が分かりました。
不必要な物で試算しているのです。
必要な物で試算すれば、彼女が提示する予算で間に合うはずなんです。
・・・たしか50万円ぐらいだったかな?
まだ他にも言っていましたが、すべて必要ないという説明を我々2人からされた彼女は、すっかりしょげてしまい、最後に
「布団も安い方がいいですか?」
と聞いてきました。
「布団? それは高いのを買いなさい」
「えっ、布団はいいの?」
「そうだね」
「私、マットにしようと思ってるんだけど」
「マットなら、なおさら高いマットを買いなさい。ほら、炊飯器とか冷蔵庫を安くした分で買えるでしょう」
「まさか、マットに賛成してもらえるとは思ってなかった」
ということで、友人と2人で説明しました。
一日24時間のうち、寝ている時間は1/3ぐらいある。それが毎日だ。安いマットと高いマットでは、疲れの取れ具合にかなり差が出る。君は働き者のようだから、疲れて帰宅するだろう。若いから睡眠時間も少ないということも考えられる。だとすれば、マットへの投資は、自分にとってとても良いだろうね。身体が元気でなければ何もできなくなるからね。ついでに、枕も寝心地の良い枕を買いなさい。
物の価値は、自分にとって必要であるかどうかを判断して考えると良いでしょう。でも、見栄えを良くしたいという目的なら、必要なくても買うでしょうね。
俗物っぽい考え方の彼女の飲み代も我々が支払い、2次会を終えました。
授業料としてもらっても良いくらいの疲労感がありました。