Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

「うつ病」 第4回 ~新型うつ~

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 どうしても書いておかなければならない内容になります。それが「新型うつ」と呼ばれるものです。実は、最近の若者を中心として多いのがこの「新型うつ」です。従来のうつの常識を遥かに超えるややこしい状態です。もちろん、回復のサポートも異なりますし、従来のうつ病に有効だと医学界が提唱する薬のほぼ全てにおいて効果は認められません。ただし、睡眠薬などは効果があるでしょうけれど。

 ある書籍によると、ある会社で「新型うつ」の従業員が1人いるのと「従来型のうつ」が5人いるのは、同じくらいの大変さがあるということみたいです。

 

「新型うつ」と「従来型うつ」の違い

 違いと書きましたが、「うつ」でくくっているので、同じところもあります。同じというか似ているところ、もしくは判断基準の拠り所での共通点です。

「うつ病」というのは、1種類ではなくて、数種類に分類されています。さらに、他の症状名がつけられることもあります。しかし、前にも書きましたが、それはただの症状に名前をつけただけで、本質的には「心の病」です。

「うつ病」と診断されるには、いくつかのチェック項目があり、それがいくつあてはまるかで診断名がつくことになっています。そのチェック項目の中に、体に表れる症状があります。「夜眠れない」とか「やる気が起きない」とか「耳鳴りがする」など、詳しくは調べてもらうと分かりますが、おおよそ「うつ病」として認定されるいくつかの項目です。チェック項目をクリアすると「うつ病」と認定されますが、どうも従来のうつ病とは違うようだということで、「新型うつ」となります。

 

 では、どんなところが違うのか説明します。

 ちなみに、私も会ったことがありますし、新聞記事を読むと、たぶんこの人は「新型うつだろうな~」という人が登場します。

 

 まず、出発点において相当違います。

 「うつ」の人は病院に行こうとしません。自分は「うつ」ではないと相当がんばります。ですから、受診するまでが大変です。ところが「新型」の人は積極的です。周りが違うと言っても、「自分はうつだ」と言って、自分で受診してきます。

 

 次に態度が全く違います。

 「うつ」の人は、自分を責め、周りに迷惑をかけてしまっているのではないかと自責の念にとらわれ、なんとか回復したいのだけど、どうすることもできないと苦しんでいます。ところが「新型」の人は、自分は全く悪いと思っていません。それどころか、悪いのは周りで、なんでも周りのせいにします。そして、都合が悪くなると「自分はうつだからしかたないんだ」と開き直ります。

 

 次に公にする姿勢が真逆です。

 「うつ」の人は、自分がうつであるということを知られたくありません。苦しくてネットで公表するのも大変な作業です。ところが「新型」の人は、どんどん公表していきます。自分はわるくないし、うつという症状だから、周りは自分を心配して当然だという思考回路になりますから、どんどん積極的に公表します。

 

 次に休みの日の過ごし方はインとアウト、陽と陰の違いが見られます。

 「うつ」の人は、休みの日は外出したがりません。誰かに会うということや、人混みを避けようとします。ところが「新型」の人は、会社を病欠していても、休日になると平気で旅行に行ったり、趣味を存分に楽しみます。

 

 

「新型うつ」とは何か

 またまだ違いはありますが、それらの違いから、周りの反応も大きく変わります。

「従来型うつ病」は、本人が最も苦しみ、周りもサポートしようとしますが、「新型うつ病」は、本人はまったくへっちゃらそうで、周りもサポートしようがなく、困惑するだけです。

 もしも、職場の中に「新型うつ」の人がいたら、ちょっと教えただけで「教え方が悪いから自分は具合が悪くなった」みたいなことも平気で言います。いくら良心的に対応しても、自分が気に入らなければ、すぐに周りのせいにします。そして、自分は「うつ病だ」と主張し、自らが被害者になって自己防衛をします。

 

 さて、以上のことから、「新型うつ」とは何かということをまとめます。

「新型うつ」というのは、「うつ病」ではありません。「うつ」であって「うつ」ではありません。だから薬も効果がないのです。

 では一体何なのか?

 私なりに行き着いた答えは「体は大人だけど精神年齢は幼稚園児病」です。

 そんな病名は正式にはありませんが、意味はそういうことです。

 

 そして、その原因は簡単に言うと過保護・過干渉です。

 子どもが自分でやるべき経験を、全て親が奪ってしまったのです。

 自分で選んで経験していないのですから、責任を取るという経験もしていません。

 それが社会に出たら、いきなり責任を自分で取りましょうとなる。それが大きなストレスとなって、現実逃避をしてしまう。そんなところでしょう。

 

 そして、心の奥底、自分でも意識出来ない心の底では、怒りの感情が燃えたぎっています。「こんな自分になりたかったわけじゃないのに、どうしてくれるんだ!」と、こんな感じです。でも、心の奥底の感情なので、表面に出てくるのは「自分は悪くないよ。うつだからね」ということで、何とかしようとサポートしても「できないっていってるでしょ!」とか「自分は全く悪くないのに、この人達は何を言っているのだろう?」となります。

 

 つまり、表面上、本人は困っていません。困っていないのでサポートの仕方はとてつもなく難しい。また、無理な要求をしてくるのでタチが悪い。他人なら全く理解できません。「まるで幼稚園児のようだ」と感じるはずです。

 だって「体は大人だけど精神年齢は幼稚園児病」ですから。

 

 でもね、やっぱり私はそういう人を責める気持ちにはなれないのです。

 というか、もともと誰も責めないのですが・・・。

 体の成長は、普通に生活していれば自然に大きくなりますが、心の成長はそういうわけにはいきません。幼少期から適切な時期に愛を受け、挑戦し、経験し、学んでいくのです。その機会を親が奪ってしまったのです。それも「かわいいから」とか「かわいそうだから」とか「こうやればうまくいくから」とか「あなたのためよ」とか、そういう美名をまとって奪っていきます。

 

 そうやって育てられたかったのではないはずです。それを社会に出てからいきなり「責任を取りなさい」と言われるのですから、「自分が悪いんじゃない」と言いたくなる気持ちも分かります。

 そして、失われた月日をとばして成長することなんてできませんから、やり直しをしなくては回復していきません。

 幼少期からの経験のやり直しです。

 とてつもなく長い月日と粘り強い支援が必要です。

 

「従来型うつ病」よりも難しいと思って、間違いありません。ただ、周りが悪いってことになっているので、自殺みたいな危険はありません。その代わり、殺意を周りに向ける危険性はあります。そういうニュース報道も最近ありました。

 

 私が毎回記事(第1回~第3回)にしているのは「従来型のうつ」の話です。

 ですから、「新型うつ」の人へのアプローチとは全く違います。

 そのことを述べて、第4回を終わりにします。

 

 

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