Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の21年間の実践理論

ペルソナ ~お面をつけた子ども達を見取る~

お面

 人は多面的な生き物であって、1つの側面から語ることなど不可能である。

「あの人は優しい人だ」とか「あの人は真面目である」とか「あの人はどうしようもない悪人だ」などと、他人が他人のことをさも分かったかのように言うのを聞く度に、私は「それはあなたがそう見ているというだけであって、それが全てではないのですよ。」と思うのです。ただ、そういう一面があなたに見えているだけなのです。そしてそれは、自分が見たいように見ているということを分かってほしいのです。

 

お面をつけた子ども達を見取る

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 これから2つの他人に関する事例を事実として紹介します。

 

事例1 小学校の引き継ぎ

 新しい学級を持つとき、前担任より子供の様子を引き継ぎます。どんなことを引き継ぐのかというと、大きく分けて2つです。

 

 1つ目は身体に関する引き継ぎです。アレルギーがあるとか、障害を持っているとか、生まれつきで仕方のないことです。これはきちんと引き継がなければならないでしょう。

 

 2つ目は性格や特性に関する引き継ぎです。「おとなしい」とか「活発である」とか「真面目」だとか「ひょうきん」だとか。これもきちんと引き継いでおきます。しかし、この引き継ぎはその通りであったこともあるし、全く違ったこともあります。


 特に注意が必要なのは、「おとなしい」とか「不真面目」とか「あまりしゃべらない」といった、本来の子供らしさとは少し違う側面について引き継いだときです。

 その中でも特に重要なのは「不真面目」です。

 たいていの場合は、前担任はあまり良く思っていないということが伝わってきますが、それはその担任との折り合いが悪かったということを言っているだけで、その子が不真面目かどうかは確定できないからです。

 

 私はこれまで、多くの「先生の言うことを聞かない子」を担任してきました。1つの学級に1人や2人ぐらいいますから、21年間の教員生活で出会った子の数は、単純にかけ算しても40人以上となるでしょう。

 でも、そういう子が「不真面目」だったということは一度もありません。不真面目な面もあったけど、それだけではなく、一生懸命に取り組む一面だってあるし、先生の言うことを聞かないなんて、そんなことは全くありませんでした。

 

 つまりは結局、その先生とその子供の間での人間関係はそうであったということで、教師が子供のせいにしている間は、見えないということなのでしょう。

 

事例2 幼保引き継ぎ

 新一年生を迎える前、学校では一日入学というのを実施します。これは子どもたちにとっては学校の様子を知り、学校に慣れるという意味と、憧れを持つという意味があります。保護者にとっては学校の仕組みや取り組みを理解するという意味があります。

 

 学校としては、子どもたちと保護者がそう思ってもらえるようにするということになりますが、もう一つ重要な役割があることを一般の人は知りません。それは、新一年生の子どもたちの様子を見るという側面です。クラス分けが必要な場合は、学級でばらつきがないように、特に注意深く見ます。

 

 さて、それとは別に、子どもたちの様子を事前に知る方法として、幼保の保育士さんたちからの引き継ぎがあります。保育園や幼稚園でどのように過ごしていたのかを聞くのです。園児と真剣に向き合っている保育士さんからは、本当に沢山の情報をいただけます。純粋に、しっかり見ていてすごいとも思いますし、子どもたちの良い面を見ようとする視点も素晴らしいと思います。

 

 ところが、保育士さんが大丈夫と太鼓判を押した子が、小学校でうまくいかなかったり、リーダーシップがありますと聞かされていた子が、友だち関係をややこしくしていたりといったことが起こるのです。

 一日入学で大丈夫でも、幼保で大丈夫でも、それはそのまま小学校でも大丈夫ということが確定しているわけではないのです。幼保という場所で、6才という年齢で、その保育士さんだったから大丈夫だったということです。

 この逆も同様です。大変困った子ならば、それはやはりその条件ではそうだったということです。

2 引き継ぎに必要なこと 

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 では、引き継ぎは必要ないのではないか・・・というと、そうではありません。引き継ぎは必要なのです。

 私が言っているのは、「この子はこういう子だ」という決めつけをしないで引き継ぎをすると良いという話なのです。その子の個人史として、「前担任とはそのような関係だったのだな」とか「保育園ではそのように過ごしたのだな」という話として引き継いでおくことです。どうしてそうだったのかは自分の頭で考え、そして実際には自分の目でしっかりと子どもたちを見ることです。

 

 先入観を持ってみるのではなく、本当にそうなのか?という目で見ることです。

 

 先日、前年度の学級ではあまり活躍できなかった子の母親と話をする機会がありました。所用で来校されたのですが、子供の話も少しだけ交流しました。

 母親が「うちの子が今年の学校は楽しいって言ってます。先生もいい先生だって。」
 と言うので、
「そうですか。私がいい先生かどうかは別として、お子さんが元気になられたのなら良かったですね。昨年はいろいろあったと聞いています。お子さんもつらかったのだと思いますよ。でも、今年に入ってすぐに元気になったのなら、元々、元気にがんばりたいと願っていたということでしょうね。」
と伝えました。すると母親は大きく頷き
「そうなんです。去年から、来年はがんばりたいって言っていました。」
という具合に会話が続きました。

 

 その子は「がんばれない子」ではないのです。前担任との関係の中では「がんばれなかった子」というだけであって、その子自体ががんばれない子ではないのです。もし、そのように活躍できなかった子を「がんばれない子」というレッテルを貼られた引き継ぎをしてしまったら、やっぱりそのようになってしまうのではないでしょうか。過去の事実からは、その事実だけを抽出することです。

 

 ちなみに、逆のことも同様に注意が必要です。それは一般的な「よい子」です。
 私の感覚では、前担任絶賛の「よい子」もまた、鵜呑みにしてはいけないどころか、それこそ注意が必要であるという認識を持っていますが、その話は長くなってしまうので、また別の機会にします。

 

 ここでもう一つ、引き継ぎでとても重要なことがあります。
 それは、家庭環境の引き継ぎです。児童調査票というのがあって、これは各ご家庭で書いてもらう家族の構成や住所や連絡先、ちょっとした親の願いなんかが書かれていますが、紙切れ一枚で家庭の様子で知れることなどたかがしれています。

 ここはやはり、前担任や保育士さんが1年間かかわってきたのですから、重点的に聞くことです。子どもたちはほとんどの時間を家庭で過ごしているので、家庭の状況を的確に知ると言うことの方が重要です。

 

 ただ、幼保引き継ぎをしてみて私が感じたのは、保育士さんたちは、子供のことは沢山知っているようですが、ご家庭のことについてはほとんど知らないようです。仕事上、そうなのでしょうけれども、若い保育士さんたちの傾向としては、多少問題があったとしても、母親と話をするのを避けてる傾向を感じます。まあ、これも仕方ないのでしょうけれども。そしてこれは、幼保だけでなく、小学校でも同様の傾向はあると自覚しています。

 

3 まとめ

 人は多面的であるということは、子供だけでなく、大人も同様です。

 それぞれの場所で、それぞれの仮面をつけて生活しています。

 それが社会生活を潤滑に過ごすために、人が身につけた知恵でしょう。

 だから、それでいいのならそれでいいのです。

 ただ、私が今回言いたいのは、その仮面は何枚もありますよということです。

 その一枚だけを見て、あの人はあーだこーだと言うのは、全く違うということです。

 そういう面もあるというだけですし、そういう面ばかりをあなたは見ているというだけです。