Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

読書の習慣をつけよう?

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 一般的に大人たちは、「子どもたちに読書習慣をつけてあげたい」という願いをもちます。願いをもつというのは、なかなか達成できないから願いをもつのであって、読書を習慣化するのは難しいということを示しています。今回は読書の習慣について掘り下げ、どうすれば読書習慣が身につくのかという難しい課題に、私なりに達したある程度の結論を説明し、読書を好きになってもらうための方策を紹介します。

 

読書の習慣をつけよう?

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 学校現場では「学校評価」という保護者向けのアンケートが1年に2度も配布され、保護者の率直な意見を聞き、教育現場の改善に努めるという活動があります。その中の質問事項の1つに「家庭での読書習慣」があります。「ご家庭でお子さんは読書をしていますか?」という設問です。この数値が低いという反省で、これを学校としてどのように改善していったらよいかということが問われていました。

 これはそもそもが間違っています。家庭での読書なのですから場所は家庭です。こういう間違いを学校はしがちです。家庭のことは家庭でしかできないのです。家庭内に「読書環境」があるのかどうかを考慮しなければいけません。

 

 では、家庭内の「読書環境」は何かと言うと、おおざっぱな説明になりますが2つの側面について理解しておくと分かりやすくなります。

 1つ目は家に本があるかどうか。本がなければ読むことは現実的に無理です。

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「わー、たくさん本あるにゃ~。どれ読もうかにゃ~。」

 本がないのなら、読みようがありません。ゲームがなければゲームができないのと同じです。ですから、家に本があればよいということになります。

「なるほど、家に本を置けばいいのだな。簡単だ!」と思われるかもしれませんが、それほど簡単ではないでしょう。なぜなら本はお値段が高いからです。

「・・・そうですね。でも、図書館で借りるならお金がかからない!」と思われるかもしれませんが、それほど簡単ではないでしょう。なぜなら図書館に行かなくてはいけないからです。

「・・・じゃあ、図書館へ行けばいいじゃん!」という声が聞こえてきそうですが、それも簡単ではないでしょう。なぜなら図書館へ行くには時間が必要だからです。

「もー、腹立つな-。じゃあ、図書館へ行く時間を作ってさ、本を借りてさ、家に本を置けばいいんでしょ!」という全てを網羅すればいいんでしょ的なお怒りが聞こえてきそうですが、まだ足りません。家で読む時間が必要だからです。

 その「読む時間」が「読書習慣」です。一日の中に読書の時間を習慣的に設けること。ここに至るまでの道のりの説明でした。

 

 2つ目は本が日常的になじめているかどうか。

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 日常の中に普通に本がある生活です。これは物質的なことではなく「なじめているか」ということ。もう少し具体的に言うと、親が本を読んでいるかということです。 本を読んでいない人にかぎって「読書をしよう!」というのです。本を読んでいる人は「読書って楽しいよ!」と言います。

 学校評価アンケートを分析するのなら、読書をしない教師と読書をしない親が読書を勧めているという現象、これに気づく必要があります。読書をしていない人が進める読書など滑稽でしかありません。泳げない人が「泳ぐのって楽しいよ!」と伝える事はできないし、料理をしない人が「料理した方がいいよ!」と他者に勧められないのです。本当はね。

 読書をしている人なら分かると思いますが、読書の習慣とは「読書するぞー!」と意気込んでやるようなものでもないのです。ちょっとした時間に、側にある本をパラパラとめくるような日常的なことなのです。時間が浮いたから本でも読もうかな?というお気楽なものなのです。運動習慣も学習習慣も生活習慣も、おおよそ「習慣」と呼べるものはお気楽です。

 その「お気楽さ」が「なじんでいる」ということで、そのお手本が「親の読書」であり、子どもの「読書習慣」に繋がっているということの説明になります。

 

「読書習慣をつけよう」というキャッチフレーズは、随分と安易に考えられていますが、少し掘り下げると難しいということが分かると思います。

 

家庭でできることと学校でできること

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※どうして読書を象徴する写真って難しそうな本ばかりなんでしょうか。これ、何の本かさっぱり分かりませんね。肩肘ついて読むような本ではないような気もします。


 読書の習慣化は難しいという説明だけでは建設的ではありません。私は難しいという理解をした上で実践することを勧めています。そして、そもそも論になってしまいますが、読書習慣はつけなくてはならないという代物でもないというのが私の考えです。読書は、しなかったら不利になるとか損をするとか、そういうマイナス面を考えてするのではなく、「読書をしている人は得をしている」というプラス面で考えると健全なのです。読書をしない人は損をしているのではなく、読書をしている人が得をしているというだけなのです。

 

 さて、ここまでを理解した上で「読書習慣」をつけたいと願うなら、次の実践は有効打になるでしょう。できそうなことをやってみてください。家庭でできることと学校でできることを分けて紹介します。

 

家庭でできることf:id:Nayunayu:20220205060929j:plain

※写真の本は不適切です。絵本がお勧めですよ。この写真、聖書かな?

1 読み聞かせをする。

 私個人の考えでは、これが最大かつ最高の読書習慣への基礎です。小さな頃から読み聞かせをするのです。これが難しい事は知っています。でも、これができたのなら、もう他のことは必要ないと言っても過言ではありません。

2 本を買ってあげる。

 一緒に本屋さんに行って、子どもが好きな本を買ってあげるとよいでしょう。本が売れない時代になったと言われていますが、図鑑の売り上げは伸びているそうです。

3 一緒に図書館へ行く。

 買うのは特別です。日常的には図書館が便利でしょう。ただ、近くに図書館がなければ難しいですね。また、親が一緒に行くのがポイントですから、親に時間的なゆとりも必要になりますし、親が本を好きでなければ無理でしょう。

4 古本屋を活用する。

 図書館は公的施設ですから、地域に1つしかありませんが、古本屋さんは民間ですから近くにあることもあります。お値段も安いので利用しましょう。

5 暇な時間を生み出す。

 極端な話ですが、ゲームとかスマホとか、子ども達が安易に楽しめる娯楽を全て奪うことです。すると暇な時間が生まれます。暇なときに近くに本があったら手に取りません? 病院の待合室などで見かけたり経験のある人も多いと思いますよ。

 

学校でできること

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1 読み聞かせをする。朝読書の時間を設ける。

 特に低学年では有効です。中学年以降は朝読書がいいでしょう。これは多くの学校で採用していますので、学校での読書は確保されているということになります。

2 教師が紹介する。

 教師というのは、有り難いことに影響力があります。担任の先生が面白いと思った本を紹介すると、かなりの子は読みたがります。

3 学校図書館を活用する。

 子ども達に自由に利用させるのもいいのですが、それだと読書をする子はするし、しない子はしません。そこで、毎週1回、自分の本を入れ替える日を決めて、一斉に本を借りる時間を作ると、それも習慣化します(実践済みです)。

4 学校図書を持ち帰る日を決める。

 先ほど書きましたが、家に本があると家庭読書の可能性が生まれます。ただ、本は重いので、毎週金曜日に一冊だけ持ち帰るみたいな活動がいいのかな?と思っています(ただし、私はやっていません。3番の毎週1回の本の入れ替え日の設定で、読書は十分できているので・・・)。

5 教師が本を借りてくる。

 少し大変ですが、教師が地域の図書館へ行って本を大量に借りてきて教室に常設することです。地域の図書館はとても協力的です。集団貸し出しというのもありますし、希望を言えば、図書館の職員が手伝ってくれることもあります。ただ、重たいので大変ですが・・・。

 

読書は楽しいかと聞かれれば・・・

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 ここまで、読書を習慣化するための大変な作業を書いてきましたが、それは読書がもたらす素敵な副作用があるからです。しかし「読書は楽しいのか?」と聞かれたら、「楽しいよ」とは答えますが、あくまで私は楽しいと感じる事ができるということであって、全ての人が楽しいわけではない、あくまで個人的な感じ方であるということになります。

 ゴルフが楽しい、水泳が楽しい、登山が楽しい、勉強が楽しい、「何でも楽しい」という人なら読書も楽しいでしょう。しかし、勉強が嫌い、運動も嫌い、人付き合いも嫌いという人が「読書は楽しい」ということがあるので注意が必要なのです。そこには依存問題が隠されているからです。

 ただ、読書依存は分かりにくいのです。私はこれを「逃げの読書」と呼んでいます。世間的には「読書をする子は良い子」みたいな感じを持たれますので、その危険性に気づける人は少ないです。休み時間に読書ばかりしている子を見ると、友だちがいないから読書に逃げているという場合が多いです。

 読書は楽しい活動の1つでしかありません。そして、子どもたちは本質的に活動的です。外で遊ぶのが大好きな生き物なのです。友だちと触れ合ったり、笑い転げたり、虫に興味津々だったりと、様々なことを直接経験したがっています。

 読書は静的です。静かな空間で自分だけの世界に浸り、想像力を働かせて自分の世界を広げていきます。

 動的なものと静的なものの融合、そのバランス、調和があってこそ、読書は最大限の魅力を発揮するものであると、私は考えています。読書だけではだめなのです。読書は経験を伴わないという一点に置いて不完全なのです。

 読書は過大評価されすぎています。先ほども書いたとおり、読書はお気軽なものなのです。「読書してます!」という主張は、個人的にはあまり好きにはなれません。「毎日歯を磨いています!」という主張を考えれば、習慣化したものは主張するような代物ではなくなっているということが分かると思います。

 それでも読書は楽しいです。

 読書が楽しいと思えるような子になってほしいですね。