「運動」が身体にとって不可欠であり、健康の秘訣であることに異論を唱える人はいないでしょう。しかし、運動に関して多くの人が勘違いをしていることがあります。それは「運動したら疲れる」という常識めいたこと。これを疑う記事です。今回の記事を読んでいただけると、子どもにとっての運動が理解できます。
1 運動しても疲れないという事実
体育の授業をし終わったとき、子ども達から「楽しかった~」とか「またやりたい!」あるいは「もっとやりたかった!」という言葉が発せられた後、必ずと言っても過言ではないほど、その後の授業での集中力が高く、元気に学習するという姿を何度も見てきました。
大人は「運動したら疲れる」と思い込んでいます。
でも、事実は違うことを示しているのです。
子育てを経験したことのある人なら、我が子の様子で理解しがたい現象を目にしたことがあると思います。それは、めちゃくちゃ遊んでいるのに「もっと遊ぼう!」と元気いっぱいだったり、さぞ疲れただろうに目がぎらついて寝る時間になっても覚醒していたりと、運動して疲れているはずなのに元気な子どもの姿です。
①「心」と「身体」は常に完璧に連動しています。
②「身体」と「機械」は別物です。
この2つを理解する必要があります。
まず1つ目です。
楽しく遊ぶと、心がはずみます。楽しいのなら意識は現在に留まりますから、時間圧縮が起こります。1時間遊んでも1時間に感じられなくなる現象です。大人なら自分の趣味に没頭する時間を想像してくださいね。
その時、疲れていますか?
おそらく、ある程度までは疲れていないはずです。
全てが終わったら、あとからドッと疲れがでることはありますが、直後には疲れている感覚はないはずです。好きなことはいくらやっても疲れないのです。あるいは、疲れたとしても、心地よい疲れからまたやりたいとなるはずです。
運動したら疲れるというのは、運動をしているからです。
遊んでいるなら、運動していますが、感覚としては遊んでいるのです。
そして、子どもにとっての運動とは、遊びそのものです。
もっと言うなら、子どもにとっての学びは「遊び」そのものです。
次に2つ目です。
機械だとエネルギー源があって、使えば使うほどエネルギーは枯渇します。これが疲れと解釈されるわけです。エネルギーを補給すれば、また動けるというわけです。
ところが、機械と人の身体は本質的に違うどころか、逆です。
人は動けば動くほど元気になります。エネルギーが覚醒するからです。
スポーツ界では「ゾーンに入る」なんて言い方をすることがありますが、仕組みは似ているでしょうね。
前の記事でも書きましたが、人のエネルギーを司っているエンジンは2つ搭載しています。「糖質エンジン」と「脂質エンジン」です。そして子どもはもっぱら「糖質エンジン」が全開です(成長過程でそうなっています)。
だから、子ども達の瞬発力は高く(糖質なので)、持久型は低いのです。小さな子が猛ダッシュしたかと思ったら、すぐに「疲れたー」となるのは自然なのです。
子ども達が最も得意とする糖質エンジンは、結構すぐに枯渇します。遊び回るからです。遊び回ることができるのなら枯渇しやすいのです。
すると、第2のエンジン「脂質エンジン」が稼働します。
この脂質エンジンは、同じ燃料でも糖質エンジンの18倍の威力を発揮します。
短距離走の限界は400Mですが、マラソンは42㎞も走れます。
つまり、爆発的なエネルギー源だということです。その仕組みは複雑なので割愛しますが、とにかく糖質エネルギーを使い切ってからが本番のエネルギーであり、その威力はすさまじいと覚えておくといいでしょう。
さらに言うと、糖質エネルギーが枯渇できない状態というのは、遊べていない、運動できていないという状態です。すると、本来運動で消費されるエネルギーであるはずの糖分が使われないことで様々な弊害を生むことになり、結果、力が入らない、ダラダラする、ボーッとする、集中力がなくなる、眠たくなるみたいな現象が次々と起こるわけです。
子どもは元気いっぱい遊ぶことで元気になるのです。
心とエネルギーの観点からの説明でした。
本当はそれ以外にもたくさんありますが、話を次に進めます。
2 子どもは理屈で学ぶより感覚で学ぶ方が良い
子どもが小さければ小さいほど、理屈よりも感覚重視です。
本当は大人になっても経験、感覚の方が重要なのですが、小さな子であればなおさらです。言葉の未発達と概念が主観に頼っているのが幼少期~少年期なので。
手足をつかって、体全体を使って、五感全てを通して子ども達は学ぶのです。遊びながら学ぶのです。遊びが学びなのです。
近年、教育界にはクロームブックというのが導入されまして、お金が随分かかっているので使わなければいけないのですが、私は個人的には反対の立場です。使い方によっては良いのでしょうけれども、基本的な教育活動にとってはなくても支障ありません。クロームブックはパソコンです。調べるとかネット上での交流とか、色んな事が出来て便利です。これからの世の中には必須という理屈も理解しています。
それでも私が反対しているのは、子ども達にとって必要なのは疑似ではなくリアルだからです。直接体験が重要だと考えているからです。
これを先ほどのエネルギーとの関連で繋げてみると、五感を使った遊びが運動そのものです。すると膨大なエネルギー源が稼働して、集中力の高まり、喜び、嬉しさや楽しさ、加えて知的好奇心の喚起が起こるのです。
心地よい疲れも起こるため、その日の睡眠の質も良くなるしかありません。
良質な睡眠に必要な1つに「ストレスがない」ことによる「ノンレム睡眠」がありますから、たくさん遊んだなら、眠りは深く、短時間でも超回復が起こるからです。
育児をされたことがある人なら見ているし、実は自分自身についても経験されている人が多いと思いますが、子どもって、休みの日は早起きで元気です。もしも、休みの日も元気がなかったり、寝起きが悪いとすれば、考えられる原因は2つです。
1つ目は、家庭生活になんらかの問題があると認めること。
2つ目は、眠りのサイクルの時間帯になっていないこと。
逆に言えば、上記の2つを整えれば、寝起きはすっきりし、元気に起きられるしかないというわけです。
さらに、運動することで、様々なホルモン分泌活動が刺激され、眠っている間に溢れんばかりのホルモンが分泌され、まさに「寝る子は育つ」状態になります。まあ、心的なことも関係してきますが、元気に楽しく遊べているのなら心的にも大丈夫でしょう。
3 まとめ
もし、子ども達を健康に育てたいのなら、身体を使った遊びをたくさんすることです。健康的な身体の成長に加え、精神的な成長に加え、経験に根ざした本物の「学び」も起こりますし、同時に集中力のある子に育ちます。
今回の健康シリーズでは、すでに何度か登場していますが、大切な事なのでもう一度書いておきます。
健康になりたいのなら「邪魔をしない」ことです。
身体も子ども達も、自然の方向で進めれば勝手に良くなろうとします。
でも、ほとんど善意から邪魔をしてしまいます。
善意であるというところが一番やっかいなんです。
悪意ならすぐに治せます。
ところが善意なら、それが邪魔をしていることに気づけないのです。
ですから、気づけないことは仕方がないので、
いっぱい遊ばせていれば、とりあえずOK!としていれば大丈夫です。
たくさん遊んだ子は、時期がくれば知的好奇心が爆発して、よく勉強する子になりますから。知的好奇心が喚起されていない勉強など、必要のない勉強をやらされているだけで、いずれ苦しくなりますよ。そして、その苦しさからさらなる苦しみが生み出されてしまうので、苦しくなってから改善でもいいのですが、幼少期に戻れるわけではないので、回復は難しくなります。
子ども達の遊びは運動であり「学び」そのものです。健やかな成長のための「必須科目」と言っても過言ではありません。
あ、ゲームやユーチューブは違いますからね。あれは運動しないし、遊んでいるのではなくて「遊ばされているだけ」ですから。なるべく短くしましょう。