我が子に「家庭学習を自ら進んで意欲的に取り組んでほしいな~。」と考えたことのある親はたくさんいることでしょう。今回の記事は、そんな夢のような状態になるための方法について解説します。・・・が、夢のような状態ですので、本質的に極めて困難です。もし、今回の記事の内容を理解して実践することができれば、数年後に実現するというレベルのものです。ですから、とりあえず絶望してもらいます。「それでもいーよー!」という人は読み進めてください。
1 家庭学習の理解
何事も、まずは理解が必要です。方法だけをお伝えしても意味が分からなければ臨機応変に対応できませんから。まずは、家庭学習というものを理解しましょう。
さて、この家庭学習というのは、よくよく考えてみると、おかしな点がたくさんあるのです。どんなところがオカシイのか、とりあえず3つほど紹介します。
①家庭学習の時間について
一般的に言われているのは、学年×10分です。これはもう神話レベルで信じられています。しかし、いつ、どこで、誰が言ったのかを教職員仲間に聞いても、誰も答えることができません。さらに最近では、それでは足りないということで「学年×10分+10分」なんていう「推し」までしています。各学校では「家庭学習の手引き」なるものを発行し、家庭学習を推進するための補助として宿題を出すのが通例です。
ある日、たまたまこの宿題の時間が話題になったので、同僚に質問しました。
「ところで君は、今日家に帰ってから、どれぐらい勉強するのかな?」と。
「しないですよ。」
「まあ、そうだろうね。でも、子ども達が学年×10分+10分ならば、我々大人だって勉強する必要はあるだろうね。大人は少なくとも6年生以上だから学年×10分+10分で70分以上は勉強する必要があるだろうね。子ども達に勧める以上は。そして、家庭学習の習慣をつけると言っているわけだから、大人が習慣づいていなければ説得力がなさ過ぎるからね。」
「無理ですね(笑)。」
「そうでしょ? 大人は仕事をしているからね。・・・でもね、子どもにとっての仕事は遊びであり勉強なのだから、そういう意味では子ども達も学校で5時間も6時間も仕事して帰っているし、そこから習い事という仕事をしたりもするわけであって、大人と同じかそれ以上に時間はないはずなんだよ。ところで、ついでだけども、君が小学生の頃は学年×10分の家庭学習をやってたのかい?」
「全くやってません。遊んでました。」
「実は、多くの教師に同じように聞いたことがあるんだけど、教師になっている人で学年×10分を小学生の頃から毎日取り組めている人はほとんどいないんだよ。そして自分もね、小学生のころは遊んでたよ。それで今、困っているかというと、全くそんなことはない。それが自然の姿なんだよ。」
②誰が勧めているのか。
家庭学習を現在していない大人、かつての小学生時代にやっていなかった大人が家庭学習を勧めているのです。これは教師に限ったことではありません。保護者も同様です。
おかしいじゃないですか。自分ができなかったことを勧めているのです。自分がやってきて良かったと感じている人なら勧めてもいいんですけどね、そうじゃない人がほとんどです。説得力があまりに脆弱です。説得力がないどころか、家庭学習の効果や意義についても理解していないのに勧める、勧めるだけならまだしも強制する、そして強制することで崩壊するという悪循環の完成です。
ついでだから言わせてもらえば、だいたいね、大人たちは勉強をつまらなかったと思っているんです。つまらないものを勧めるって、それだけでも変。だから「将来のため」みたいなことを言うけど、勉強した人たちが全員幸せならいいんですけどね、実際はそうはなっていないという事実。これもしっかりと見た方がいい。
私は中学生の頃から、自ら進んで勉強しました。勉強することで親に褒められたことなど、ただの一度もありません。
そして、多くの子ども達と接してきて、この子は素晴らしいな~と思う子の親に、数年間にわたって「家でどんな風に過ごしているんですか?」と質問したところ、そのほとんどの親からの解答は「家ではダラダラしている。」「勉強しなさいと言ったことはない。」「遊んでいる。」という内容でした。
実はそういう素敵なお子さんに育てている親は「放牧状態」にしていることが多いです。理由を聞くと、大抵、自分もそうだったからです。素敵なお子さんである理由は自己肯定感が高いからなんですが、親もまた自己肯定感が高いです。
大切なのでもう一度。
我が子を「放牧状態」にしている親は、かつての自分もそうであって、それで自己肯定感が高いのです。
ついでにもう一つ。
その子は素敵なので、そんなに家でダラダラしているのにもかかわらず、学力が高いです。頭の回転がよく、教えてことを素早く理解し、自分でアレンジまでします。
③家庭学習の効果について
小学生においての家庭学習に限定すれば、家庭学習による学力向上の効果はほとんどありません。そういう研究結果も発表されていますから、ネットでぐぐってみると、すぐに出てきますので、信じられない人はググってみてください。ここではその詳しい説明は割愛させてもらって、事実だけを書きますね。
もう一度書きますが、家庭学習による学習効果は期待できません。
しかし、違う効果はあります。
それは、勉強は面白くも何ともなく、義務であり、強制労働であり、大嫌いになるという効果が抜群にあります。ですから、反抗するまでは家庭学習を続けることが可能ですが、破綻することは確定しています。それがいつ破綻するのかというだけであって、いつ破綻するかはそのご家庭の状況によって様々ですが、早く崩壊すればするほど軽傷で済みます。大学卒業ぐらいまで崩壊しなければ、社会人になってから崩壊しますので、もう取り戻すのは極めて困難です。
勉強が嫌いになるための活動は、嫌いになる年齢よりも遥かに前から始まっていますので、さらに絶望してもらいます。
勉強嫌いは6歳までに完成します。例え素直に勉強に取り組んでいるように見えたとしても、そう見えているだけです。
唯一、家庭学習に関する良さそうな効果があるとすれば、子どもが帰宅した後にするゲームとかユーチューブやテレビを観る時間を少なくすることができることぐらいでしょう。
「いやいや、家庭学習は学習の習慣をつけるのに役立つはずだよ。」という反論がありそうですが、それも間違いです。理由は私がそうだからです。私は中学、高校と家庭学習をそれなりにやりましたが、現在も習慣化しているかというと、していません。必要なら勉強するし、必要ないならしません。ただそれだけです。したいときにはするし、したくないときにはしません。そんなもんです。それでいて、私は今も勉強は好きですよ。どうしてでしょうね?
2 家庭学習をする子の特徴
私の友人の子が、毎日家庭学習をやっていたんです。
私は不思議に思って確認しました。
「あれ、君は家庭学習とは無縁だったけど、一体全体、どういうこと?」と。
すると、友人は
「いや、俺がやってこなかったからさ。後悔している。子どもには後悔してほしくないからやらせてんだ。」
と言うのです。それで気づいてもらうためにさらに質問します。
「なるほど。後悔しているんだね。じゃあ、今からやったら?」
友人は少し不思議そうにしていましたが、私の友人ですから話は聞いてくれます。
「いや、今からはできない。だけども、小学生に戻れたらやる!」
私は手を緩めず問答を続けました。友人だからね。
「ところで、君は今の人生には満足していないのかい?」
「・・・いや、している。」
「・・・」
「・・・」
「何が言いたいか分かるかな?」
「・・・?」
「・・・つまりね、今の人生には満足しているけど、過去に勉強してこなかったことは後悔しているんだよね。それは矛盾しているってこと。今の生活は過去から連続的に繋がっているわけであって、過去が変われば今も変わるってことでしょう。それでいて、今の自分、今の人生に満足しているわけだからね。」
さらに追い打ちをかけてあげます。友人だからね。
「ついでだから言うけどね、もし君が過去に戻れたとしてだよ、君は勉強はしないよ。また、違うことを見つけて楽しむだろうね。君とはもう何十年も友だちだから言えるんだけど、君はまた、勉強以外のことを楽しむだろうね。」
すると、友人は深く納得しましたが、さらに追い打ちをかけます。
「ところで、奥さんは勉強してきた子だっけ?」
「いや、全くしてない。」
「・・・だよね。それでいて、キミの子は随分と成績がいいじゃないか。凄いことだけど、必ず崩壊するよ。今はしていないだけで、君も勉強していない、奥さんも勉強してこなかった、それでいて、キミの子は勉強を強制させられて勉強しているわけだから、偉いと言えば偉いんだけど、相当無理しているよ。」と。
友人なので、私の指摘を受け取り、急に不安になったようで
「どうすればいい?」と聞いてくれましたので、
「とりあえず、勉強は本人に任せて、それ以外のところは完璧だから続けな。」と伝えておきました。
それから数年経ちましたが、その子はずっと成績が良いままでした。
今は友人が行った高校よりも遥かに学力が必要な高校に通っています。
ちなみに、その当時、友人の子はチック症状も出ていましたが、それもすぐに解消されました。
家庭学習を「やらせること」はできます。子どもが従順だったり、親が権威的だと、かなり長い期間「やらせること」はできます。
しかし、私がお勧めする家庭学習を「する」という状態は、あくまで「自ら進んでやる」という状態です。
前置きがかなり長くなってしまいましたが、上記の物語からも言えるように、本当に自分で勉強する子は「自己肯定感の高い子」です。
このことを理解すれば、家庭学習をやる子になるための方法も見えてきます。
3 家庭学習をやる気になる子になる方法
言葉に注意深くなってください。
見出しタイトルには「やる気になる子になる」と書きました。「やる気にさせる」とは書いていません。つまり、勉強する子になるというのは、状態のことを言っているのです。勉強させるのではなく、勉強する子になるのです。そのための方法ですから、即効性はありません。
やがて勉強が嫌いになる子になるのではなく、やがて勉強が好きになる子を目指しているので、ちょうど真逆です。ですから、即効性がほしいのならお勧めできません。強制的にやらせてもすぐに悪影響が出るというわけではありませんし、少なくともゲームやユーチューブなどの依存の軽減には役立ちますから、とりあえず強制的にやっていても大丈夫です。できそうなことから、徐々に変えていくことがお勧めです。
では、具体的な方法をいくつか紹介します。
できそうなことをやれば、少なくとも今よりはよくなるはずです。
そして全ての方法は全て「自己肯定感の育成」に繋がっていますので、ここで紹介する方法以外であっても、「自己肯定感が高まる活動」ならば効果があります。
①基本手順
まず「勉強しなさい」という言葉をNGにしてください。活動の一切を子どもに任せます。それは信頼感であり、すべてを受容するということです。全てを受容されるのなら、自己肯定感は高まるしかありえません。
次にゲームやテレビ、ユーチューブの時間は制限してください。人だ誰でも易きに流されやすいので、「勉強しなさい」をNGにすれば、その易きに流れていくのは目に見えています。要は、空いた時間をどうするのかを決めなくてはいけません。
ですから次にやるべきことは、空いた時間からテレビやユーチューなどの時間を奪うということです。すると暇になりますが、その暇、つまり「間」がポイントです。子どもが本来の姿を取り戻せば、子どもはクリエイティブになっていきます。暇なので遊びを見つけ始めます。
次にお手伝いをさせてください。そしてお手伝いをしてもらったら、うーんと感謝の意を伝えてください。これで自己肯定感が高まりまくる上に、空いた時間の一部も解消されます。
最後に、会話をたくさんしてください。いいですか、会話ですよ。尋問はいけません。あくまで会話です。基本は子どもが話したいことをくすぐる感じで、聞き役に徹することです。すると、ある程度すっきりした段階で「勉強でもすっかな~」なんてことも起こったりします。
以上が基本手順ですが、基本手順なので、ご家庭の状態によってアレンジが必要です。基本からはずれないようにアレンジすれば大丈夫です。
②食事は手料理で。
健康シリーズでもお伝えしてきましたが、心と身体は一体ですから、手料理は必須です。身体が元気になることで、何かしたいというエネルギーも充足します。身体が不健康だけど勉強はがんばれ!というのは拷問です。大人だって身体がだるい状態で仕事をバリバリできる人などいません。もしいたとしても、必ず体を壊します。
③食事中はテレビを消す。
テレビは基本的に消している状態が望ましいのですが、少なくとも食事中は消してください。消すことで会話が発生します。テレビを消す理由は他にもありますが、長くなってしまうので先に進めます。
④部屋を片づける。
散らかっていると集中できません。お部屋が散らかっているのなら、片づけましょう。子どもと一緒に片づけられるのなら、それがベストです。整理整頓ができているお部屋は、思っている以上に重要です。ついでに、空気交換も必須です。良い空気もお部屋と同じように実は重要です。
⑤見守り続ける。
④までできたのなら、あとは見守ることです。「見守る」のです。とても大切なのでもう一度書きます。「見守る」のです。
実は「見守る」ということと似ていて、全く逆の状態があります。それが「見放す」です。「見守る」と「見放す」は似ていますが、全く違います。
「見守る」というのは、邪魔はしないけど、いつでも見ているよという状態。
「見放す」というのは、邪魔はしないけど、見てもいないよという状態。つまり「ネグレクト」です。ちなみに、「過保護」「過干渉」「ネグレクト」が子どもにダメージを与える三大行為ですが、その中でも抜群の破壊力があるのが「ネグレクト」ですから、「見守る」と「見放す」の違いをしっかりと理解しておくことは必須です。
基本手順に沿いながら、そのほかの内容にも取り組めると、1ヶ月ぐらいで子どもの表情が変わるはずですから、見逃さないでくださいね。
まだまだ紹介したいことはありますが、文字数が・・・。
6000字を越えそう・・・。
なので、今回はこれでおしまいにします。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
子ども達の表情が生き生きしたり、ご家庭で嬉しくなる効果が起これば、私も書いて良かったなーと嬉しくなります。
次回は「読書」について書きます。なるべく長くなりすぎないように気をつけますので、今回の記事が気に入ってもらえたなら、次回「読書をする子になる方法」のページも開いてくださいね! とりあえず読書についても絶望してもらいます。