Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

食卓は多くを物語る

 食事が大切だという事はあえて言うようなことでもありませんが、食事をするときの食卓の重要性についてはどうでしょうか。食事も大切ですが、それをどのように食べるのかも同じように大切です。

 食事は物理的側面、食卓は精神的側面。その両面を補完することで、食事は素晴らしい力を発揮します。食べるという行為は同じでも、影響力が違いますから、今回の記事を読んで、1つでも2つでも改善できると、イイコトしか起こりません。また、もうすでにできているという人は、自分たちがやっていることの価値の確認作業ができるので、是非読み進めてください。

 

1 実態は極めて深刻としか言いようがない

 以前にも書きましたが、子ども達に朝食の調査をしたところ、そのほとんどがパン、しかも菓子パンが多く、家族そろって食卓を囲んでいる人はほとんどいませんでした。朝食に菓子パンは栄養面から見ると、そもそも大問題なのですが、今回は食卓の方に焦点を当てます。

 

 数年前、クラスの子が不登校になりましたので、定期的な面談をしたことがあります。その頃の私は、まだ不登校の原因とかをはっきりと掴んでいるわけではなかったので、養護教諭のスペシャリスト(カウンセリングもできる)と共に面談を続けてきました。

 

 最初は、不登校になった子の家での様子を聞いたり、家でのアプローチの仕方について話をしていたんですが、少しずつ家庭の実態が明らかになってきます。外側から見れば、なんの問題もない普通の家庭で、両親は協力的で、夫婦仲も良い(少なくとも良さそうに見える)。子どもの状態も問題は見られない。お友達関係も良好ですし、勉強もしますし、性格も明るい(少し引っ込み思案でしたが)。

 その実態の中で、私が特に驚いたのが食事だったのです。

 驚いた理由は2つです。

 1つ目は、養護教諭が食事に注目していること。不登校と食事の関連について、その頃の私は全くの無知でしたから「そんなことが関係しているんだ~。」という驚き。

 2つ目は、実態が明らかになったときに見えた、食事のひどいありさまです。

 

 まずは子どもの食事に関する実態は次の通りです。

・好き嫌いが異常に多い。

・いつも食べ残す(給食もそうでしたが・・・)。

・食事の前におやつを食べ、食事の後もおやつを食べている。

・干物が好きで、お酒のつまみになるような味の濃い物を食べる。

・それはお父さんがいつも食べているから一緒になってつまむ。

・朝食も夕食も、食べられる人から食べるので、家族がバラバラ。

 

 養護教諭はお父さんを召喚します。不登校の場合、お母さんが鍵を握っていますが、お父さんの協力も不可欠です。食事だけではありませんが、色々と食事の面でも協力してもらう必要があるからです。事前にお母さんから、お父さんの食事への対応に関するまずい点が見つかっていたので、ややお説教気味です。

※明るいお説教ですから、雰囲気は良かったです。

 

 お父さんの食事に関する実態は次の通りです。

・お母さんがどんな料理を作っても、濃い味が好きなので、とりあえずソースなどをドバッとかけてしまう。

・干物とお酒が好きなので、毎日食している。

・料理を作ってくれたお母さんへの感謝がなく「美味しいね」と言わない。

・テレビを観ながら食べる。

 

 これを全部やめてもらいました。明るくお説教する養護教諭に対して「すんません。えへっ。」みたいに反省してくれました。

 

 ここまでをまとめます。問題点はおおざっぱに言うと次の通りです。

・好き嫌いが許されすぎている。

・食事に感謝がない。

・テレビを観ながら食べている。

・お菓子がありすぎる。

・食べ残しが常習化している。

・家族がバラバラに食事を摂っている。

 

 ごくごく普通の、一見すれば何の問題も見当たらないご家庭です。

 なんなら、学校に協力的で、両親共に明るく、まさか不登校が発生するようには思えない素敵なご家庭です。それでも、食事だけで改善点がこれほど見つかることに私は驚いた記憶があります。

 この状態は子どもが小さい頃から続いているでしょうから、日常化していて普通になっています。ですから、そこが問題だとは気づけません。

 

 アプローチは食事だけではありませんでしたが、約半年で不登校は終わりました。素敵なご家庭でしたから、回復も早かったのでしょう。今回は食卓だけに焦点を当てて、話を進めます。

 

2 食習慣の観察

 多くの人は、自分の食習慣を観察するのを恐れています。観察すれば結局、食事以外にも多くの問題が見つかってしまうからです。ですから、食事だけの問題ではなく、食事は多くを物語っているということです。

 食事をするときの食卓では、多くの出来事が起きています。

 先に述べた子に関して言えば、小さい頃から完食をするという、小さな成功体験をロストし続けているいるというのも1つの例です。成功経験の少なさは自信や達成感の欠如にも繋がります。

 そして、ある研究によると(本で読みました)、人の振る舞いは他の人に伝染してしまうことが証明されているそうです。目には見えないウイルスのように、人から人へ感染してまうそうです。まあ、なんとなく分かりますね。

 

 では、恐れないで観察してみましょう。

 自分で観察するだけなので、誰からも批判されません。素直な気持ちで俯瞰してください。チェックリストを用意しました。

 プラス面とマイナス面はセットですから、どちらでも書けるのですが、楽しい気持ちになってほしいので、プラス面でのチェックリストにしますね。当てはまった数が多いほど良好だと捉えてください。マイナス面はプラス面の逆の関係になります。

 

◇一緒にいて楽しく、幸せな空気が漂う食卓である。

◇食事をすると緊張感が解ける雰囲気が家庭にある。

◇食べるペースはゆったりである。

◇食事が終わっても、誰も急いで食卓を離れようとしない。

◇食事を作ってくれた人に感謝の言葉がある。

◇食べ物への感謝の言葉もある(いただきますでいいかな?)

◇美味しそうに食べる。

◇食事や食べ物に不満を言わない。

◇健康的な食事が楽しいことを理解している。

◇食事の前後に軽食を食べていない。

◇食事の量は控えめ。

◇食習慣に関して自由に意見を言える。

◇誰かが食べ過ぎたりしていたら、感情を傷つけずに指摘できる。

◇食事中はテレビが消えている。

 

 さて、いくつ当てはまりましたか?

 8個以上当てはまっているのなら、食卓はかなり健全で、子どもにとっても家族にとっても、自身にとってもかなりの良い影響力が働くはずです。

 私自身の子ども時代を振り返ると、チェックできない項目は「食事の量は控えめ」1つでした。たくさん食べることが良いことだと思っていましたので・・・。あと、たま~に不満を言ったこともありましたが(「え~、今日、魚~?」みたいな)、叱られた記憶が・・・(「じゃあ食べるんじゃない!」みたいな)。

 

おわりに・・・

 健康シリーズでは、食事の大切さを書いてきましたが、今回はその食べ方、食卓に焦点を当てて書いてみました。

 これはどの分野でも共通することで、どんなに良いものでも、それをどのように扱うのかによって、その効果は劇的に変化します。

 食事は毎日のことですから、その影響力は多大です。

 もしかしたら、コロナによる学校給食の孤食も、子ども達に影響しているかもしれません。実は、「楽しく食べると、身体はたくさん栄養を吸収してくれる」という実験結果もありますから。

 是非、できそうなことからやってみてくださいね。