Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

新学期の「引き継ぎ」は「何を引き継ぐのか」

 新学期に向けた準備が始まっています。

 教室を作ったり、児童名簿を作ったりする個人的なことと、分掌部会やとりあえず4月の動きの確認やらの学校全体の事をします。

 その中の1つに「児童の引き継ぎ」というのがあります。

 簡単に言うと、前年度の担任から「この子はこういう子ですよ。」ということを教えてもらいます。そして、注意することとか、この子は誰と仲が良いとか、勉強はどれぐらいできるかなど、分かりやすい特徴を知る作業をすることになります。

 普通はこれでOKなんですが、私はこの引き継ぎでは足りていないという立場で、私が引き継ぐ場合は、違う情報を引き出します。

 

子どもの情報は話半分くらいで聞く

 まずは多くの人が信じている引き継ぎを壊します。

「この子は家庭学習を真面目に取り組んできます。」という引き継ぎがあったとします。この場合「真面目に」が余計です。「家庭学習に取り組んでいる。」という事実だけが確かなことで、それ以外は主観が入ります。もしかしたら「家庭学習を嫌々やり続けています。」というほうが正確かもしれません。

「この子は悪さばかりをしていて、担任の言うことなど聞きません。」

 事実、そうなのでしょうけれども、ではなぜそのようなことをするのですか?と聞いても、たいていの場合は、その理由は分かっていません。

 子どもに問題があるようですが、一番の問題は「その理由が分かっていないこと」であり、二番目の問題は「その子が悪い」という見方をしているという点です。

 それらの事実は事実として必要な情報です。しかし、それだけでは足りないのです。もっと大切な情報があるのです。

 今更言うまでもなく、人は多面的です。1つの側面だけを捉えて、あの人はああだとか、この人はこういう人だと断定するのは危険です。少なくとも言えることは、あなたとその子の関係はそうであったという事実だけなのです。ですから、担任が変われば良くも悪くも変わります。そういうものです。

 

引き継ぎで最重要項目は・・・

 家の情報です。その中で最大の影響力を誇る母親のことを聞くこと。

 言うまでもなく、保護者と教師の連携は、主に母親が担っています。

 ですから、母親がどういう人物なのかということを知っておく必要があるのです。ごく簡単に言うなら、とりあえず引き継ぎでできることは、協力的かそうでないかぐらいですが、協力的ならば子どもの状態はとりあえず良好とみていいでしょう。

 さらに、保護者の仕事も聞きます。児童調査書というものにも書かれているので、それを確認しておいても良いでしょう。

 そして保護者の年齢もチェックします。年齢は、どの時代を生きてきたのかという指標になります。時代ごとの大きな価値観みたいなものがありますから。ついでに父親と母親の年齢の比較もします。年上か年下か、離れているか近いかなど。

 家族構成も必ず引き継ぎます。きょうだいは必ず影響し合っていますから、何人いて、何番目で、きょうだいが居る場合はそのきょうだいの様子も聞いておきます。祖父母が同居の場合も、どちらの祖父母なのかをチェックします。ついでに健康状態も。

 ・・・ただ、ここまで聞いて前担任がすらすら答えられるということはほぼありません。普通は子どもの状態で終わるためですし、教師という職業上、それでOKですから。ですから、可能な範囲で引き継ぐということになります。

 

 これも言うまでもありませんが、子ども達の主な性格のようなものは、家でつくられています。家以外にはありえない。「三つ子の魂百まで」は正しいので。

 本当は、家の様子も聞きたいところです。部屋の様子と言った方が分かりやすいでしょうか。動物を飼っているとか、部屋が綺麗だったとか、広かったとか狭かったとか、団地なのか一軒家なのかなど、それらはすべて繋がっているので、総合的な判断に役立つのです。

 ところが、最近は家庭訪問がなくなりつつあるので、その情報があまり得られなくなってしまいました。・・・仕方ないですね。

 さらに、引き継ぎで前担任に聞いても、ほとんど答えられませんが、私は面談の時には保護者の出身地も聞きます。どこで育ったのかという場所も重要なのです。その土地ならではの文化や価値観が母親の考え方に反映されますから。

 ついでに親のやってきた運動があれば、それも聞いておきます。

 この辺りになると、引き継ぎでは無理なので、面談で直接聞くことになります。

 

まとめ

 引き継ぎでは、何を引き継ぐのか。

①子どもの自身の情報は話半分ぐらいで聞くこと。

②ポイントは事実のみを確認すること。主観が取れることで話半分になる。

③家の情報、特に母親の情報が最優先。

④ついでに可能な限り、家の情報を引き継ぐこと。

 

 新学期がはじまるとき、全ての子ども達は「以前の自分と変わろう」とします。前年度が良ければ「もっと良くなるぞ!」となりますし、前年度がパッとしていなければ「今度こそ!」となります。もし、それが一切起きていないのなら、それはすでに手遅れレベルでどうすることもできません。すぐに保護者に来てもらう必要があります。

 

 前年度の引き継ぎというのは、必要なんですが、それに囚われすぎると新学期に向けてやる気を出している子をはじめから色眼鏡で見ることになってしまいます。

 新担任は自分の目でしっかりと見ることが大切なのであって、前年度の様子を使って、しかも前担任の目を使って担任する子を見てはいけません。

 

 さあ、もうすぐ新学期が始まります。

 新たな出会いを新鮮な気持ちで迎えましょう。・・・というお誘いです。