物語には、たくさんの共通する法則のようなものがちりばめられています。法則とは、他のことにも共通すること、同じようなこと、応用して考える事ができること、世の中の仕組みみたいなものです。作者(物語文)や筆者(説明文)が知っているから書いたとは限りませんが、注意深く読んで関連づけらることができたら、法則のようなものが見えてきます。
ありの行列
光村の3年生国語の教科書下巻に『ありの行列』という説明文があります。学習課題は「感想を伝え合おう」になります。子ども達が感想を持って、感想文を書き、お友達と交流するという内容です。
感想を伝え合うのがテーマですが、まずは読解や説明文ならではの学習があります。ですから、感想の前に本文を学習しました。
お話は次のように展開しています。
・ありはなぜ行列を作るのだろう?という疑問。
・ありの巣の側に「さとう」を置いてみる。
・しばらくすると、ありが見つけて巣に戻る。
・すると、仲間のありがぞろぞろと出てきて、一列になって進む。
・その道は、なんと最初のありが通った道からずれていない!
・今度はその途中に石を置いてみる。
・すると、石のところでありたちは右往左往する。
・ところが、最初の一匹が乗り越えて新たな道を発見する。
・すると、他のあり達も次々に乗り越えて行く。
・やがて新しい道ができる。
・道ができる理由は、ありのお尻から臭いのある液が出ているから。
とまあ、こんな感じです。
最初の一匹
最初の一匹が大切なのです。最初の一匹が他の多くの仲間を連れて行くのです。私は子ども達に「こういう存在をパイオニア、先駆者と言って、実は人間の社会でも同じようなことが起きているんだよ。」と教えました。子ども達は「うん?」という不思議そうな表情でしたので、いくつか例を出しました。
例1 メジャーリーガー(スポーツ)
今は多くの日本人がメジャーに挑戦するようになりましたが、私が中学生のころなら、日本人には無理だと言われていました。ところが、野茂選手がメジャーに挑戦して大成功を収めます。野茂選手が道を切り開いたからこそ、今のメジャー挑戦があるのでしょうね。
例2 セブンイレブン(商売)
今はコンビニが生活に根ざしていますが、私が小学生の頃はありませんでした。プロジェクトXという番組でセブンイレブン1号店に挑戦した人たちの特集をしていましたが、かなり大変だったようです。1号店の努力があったから、今のコンビニ乱立があるのでしょうね。
例3 電気(科学)
エジソンが電気を発見しました。これにより、世の中の仕組みや生活の仕方が変わりまくりました。これなんかは、ありの行列とかなり似ていますね。
スポーツでも商売でも科学でも、あるいは他のジャンルに置いても同じ仕組みです。最初の一人が大切なのです。東日本大震災の特集では、地域の誰か一人が「逃げるぞ!」と言うと、その地域全体は逃げることに成功していたとの報告があります。ですから、防災訓練では、この最初の一人をあらかじめ決めておくという取り組みをしているそうです。
子ども達の一人がはっと気づきました。
「そういえば、僕たちもテストが終わったとき、最初の一人が出しに行ったら一気に出しに行くね!」と。
大変よい気づきです。
臨界量は少なくて大丈夫
最初の一人は数としては少ないと思うかも知れませんが、ドミノのように次々と倒れていきます。または、池に石を投げたときに波紋が広がるように広がります。
この一気に広がる臨界量は、実は大変少なくても起こるのです。
私の得た知識では、おおよそ全体の1%の数で十分であり、5%を越えると流れは止められないほどになり、35%を越えると大流行となります。どうも、こういうことを知っている人が、商売でも流行というものを作っているようですよ。
がん細胞も同じです。最初のがん細胞から少し大きくなるまでには随分時間がかかりますが、少し大きくなったところからかなり大きくなるまでには時間はかかりません。ですから初期発見が大切だということでしょうね。
この法則を理解して使うことができるようになると、例えば教室で子ども達にやる気を持たせるなんていうのも、全員である必要はないということが分かってきます。数名のやる気のある子に注目することで、教室全体に広がっていくということになるでしょう。例えば、職場の雰囲気が悪かったとしたら、雰囲気を良くする最初の一人に自分がなれたら、やがて職場全体に素敵な空気感が広がっていくということになります。
身近なことで実験してみたら面白いかもしれませんね。