Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

子どものイライラ感を受け止める方法①

イライラ

(2020.6.03 加筆・修正)

 「子どもは素直である」というのは、当たっているし間違っています。そうである場合もあるし、そうでない場合もある。イライラ感をため込んでいると素直になれません。本当に思っていることではないことを「自分は本当にそう思っている」と錯覚して言っています。素直になれない原因であるイライラ感を受け止めれば素直になることができるという記事になります。

 

ただなんとなく嫌だという出来事 

 新学期が始まって2日目の今日、学級の係というものを決めることにしました。

 新しく受け持った5年生の教室です。

 4年生の頃にはどんな係があったのかを聞くと、新聞係やら学習係やら遊び係やらたくさんの係が発表されました。そして、それはどんな係だったのかということを調査していると、どの係も必要ないというようなことを言い始めました。

 

 例えば、遊び係。

「本当は仲良くなるための係なのに、遊び係の活動で言い争いがたくさんあった」

「遊び係の提案には全員参加しなくてはいけないから、嫌だった」

 

 例えば、新聞係。

「最初だけ活動していたけど、途中から何もしていなかったから」

 

 例えばお助け係。

「結局何もすることながなかった」

 

 例えば学習係。

「朝の学習で注意するんだけど、みんな言うことを聞かなくて、結局言い争いになったから」

 

 そうして子ども達の意見を聞きながら束ねていった結果、4つの係しか残りませんでした。

・並ばせ係(体育の時に体育館で並ばせる係らしい)

・配り係(配布物を配るお手伝いをするようです)

・メニュー係(楽しみにしている給食を発表し、食欲を喚起するみたいです)

・牛乳パック係(牛乳パックを所定の場所に持っていくみたいです)

 

 う~ん、どうしよう。少なすぎる・・・・。教室には32名の子ども達がいるのですから。ちなみに、黒板消しは日直の仕事で、給食や掃除は当番です。

 あっ、そうそう。整理整頓係っていうのを作りたいなと私は言いました。

 教室がいつも綺麗になって、気持ちが良いし、出番も多いからねと。

 子ども達も、それはいい係だというような雰囲気になりました。

 すると、ある男の子が突然

「それは嫌だ」

 と言い出したのです。どうしてでしょうか? 話を聞いてみます。

「なんか、自分の物を触られるのは好きじゃない」

 と理由を述べます。周りの子は「えーー?」みたいな反応です。

「では、配り係も自分の物を触られるから嫌って事になるけど?」

 と、問答を開始します。

「いや、配り係は、結局自分のところに戻ってくるからいい」

「へー、そうなんだ。でも、整理整頓だって、自分の物が自分の場所にきちんと収まるから気持ちいいと思うけどね」

「・・・・でも、なんか嫌だ」

「・・・・そうか、嫌なんだ」

 

 と、5分ほど問答していると、周りの子ども達がざわつき始めます。その男の子の言い分に筋が通っていないからです。「えー、そんなの変だよ」という声もチラホラと。

 

 それで私は

「じゃあ、整理整頓係はなしにしよう!」

 と言って、黒板に書いた「整理整頓係」という文字を消しました。

 それまでざわざわしていた子ども達が一斉に

「えーーー!」

 となります。その男の子を非難するような感じです。

 子ども達にとって、担任の先生は良くも悪くも正義そのものの存在です。

 だから、当然、私の味方をするという理由からの批難もあるでしょう。

 そこで、私は子ども達に説明します。

 

 あのね、整理整頓係がなくたって、実はたいした問題ではないんだよ。先生が気をつけていれば教室は綺麗に保たれるからね。そして、今君たちは、自分たちが考えていることが正しいから、相手の意見が悪いみたいになっていると思うけど、そんなこともないんだよ。A君が「嫌だ」と言ったことを否定してはいけないよ。嫌な理由はうまく言えなかったとしても、そして、本当は嫌ではなくて、別の理由があるんだけど、嫌だということを言った理由は必ずあるのだから。 

 

 私が受けていた引き継ぎでは、その男の子は聞き分けがなく、親の言うことにもいつも反発しているということでしたから、その過去のものが出てきただけなんです。そして、それにはおそらく深い理由があります。「昨年までの積み重なっているイライラ感が2日目に出てきている」というのが正確な見取りでしょう。

  

 その後、その男の子はとても明るい表情で友達と遊んでいました。

 私から見える場所にだいたい居るのです。

 なんだか、嬉しかったのでしょうね。

 

子どものイライラ感を受け止める為に必要なこと

 イライラ感というのは、「イライラしないようにしよう」という自分自身の抑制や、「イライラしてはいけないよ」という外側からの教えでなくなるということはありません。

 

 では、どうすれば消滅するのかといと、そのイライラ感を受け止めるのです。

 大人であれば、自分自身で受け入れるということになりますが、実は大人でも難しい作業です。だから、子どもなら、自分自身で受け入れるという作業はなおさら難しいでしょう。

 だから教師は、教室では子ども達の親となって、その気持ちを受け入れる必要があるのです。つまり、子どものイライラ感を受け止める為に必要なことは、教師の受け止めるという愛情を持つ覚悟です。

 

 私は、子ども達が本心からわがまま、生まれつきわがままであるということはないという立場をとっています。なぜなら、子ども達の本心は 「みんな良い子でありたいし、みんなと仲良くしたいし、みんなのために活躍したいと願っている」ということを私は知っているからです。

 でも、素直になれない理由があるのです。

 それは、おそらく長い年月満たされなかった何かが原因です。

 その元となっている何かは分からなくても大丈夫です。ただ満たされれば、本当に願っていることを素直に出せるようになるのです。

 

 子ども達の心が少し満たされたときに少し元気になる。

 それが「子ども達の目が輝く」ということです。

 教室は、このような出来事を繰り返す場でもあります。