Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

めんどくさい病

めんどくさい病

( 2019.11.08 の記事をリライト)

 絶望病とまではいきませんが、学級の子ども達に次のような症状が見られる場合があります。 

「頑張るのがめんどくさい」

 学校には来ているのですが、何をやってもやる気がみられない。たまに自分の好きなことには興味を示すものの長続きしない。能力も時間もチャンスもあるのに、やればできるのにやらない。教師の声は全く届かない。

 その原因を探り、極めて困難ではありますがその対処方法をお伝えします。

 

めんどくさい病の発症と進行

 最初は、先生が何かを指示すると「めんどくさい」とぼやく程度です。漢字の練習や計算問題、ノートのの書き取りに見られます。それが進行していくと

「期待されるのもめんどくさい。」

「縦のものを横にするのもめんどくさい。」

 やがて

「学校に行くのもめんどくさい。」

  となっていきます。そして大人に近づいていくと

「決めるのがめんどくさい。」

「社会に出るのなんて考えられない。」

「恋愛はバーチャルで十分というか、それすらめんどい。」

「家庭を持つのなんて、考えたこともない。」

「人に頼るのもなー、もうほっといてほしい。」

 そして、とうとう

「生きるのも、なんかめんどさいな~。」

 となっていきます。

 

 この状態のことを「回避性パーソナリティ障害」と呼ぶそうです。私も最近知りました。いえ、このような子どもがいることは知っていましたが、そのような障害名がつくということは知らなかったということです。でも、障害って、なんだか名前が怖すぎるので「めんどくさい病」ぐらいがいいのではないかな?と。

 

「死んでしまいたい」とか「生きる意味が分からない!」というほどの切迫感はありませんし、人畜無害なんですが、せっかくの人生を生きながらお休みしているという状態でしょう。「みんなに迷惑はかけないから、せめてそっとしておいてほしい」ということだと思います。

 

 めんどくさくなる原因

「めんどくさい病」の子がクラスにいたとしたら、教師としてはなんとかやる気を出してほしいと願うでしょう。しかし理由が分からなければ、すべての対応は効果が薄れます。ですから、まずは理由とか原因を知りましょう。

 

1 原因(ネグレクト)

ネグレクト

 「めんどくさい病」の根底にある原因は、ネグレクト問題がひそんでいます。場合によっては親からの期待のかけ過ぎという逆の問題のこともありますが、ネグレクトがベースです。これは「回避性パーソナルティ障害」について理解すれば納得できることになっていますが、ごくごく簡単に説明します。

 

 本来、自分の気持ちを受け止めてくれる予定だった親が育児放棄をする状態が「ネグレクト」です。子どもは親の期待に応えようと努力するのですが、その親から何も反応がなければ、子どもは何をすれば愛されるか分からなくなります。それはとてもとても辛いことです。何をしても親に喜んでもらえない子は、やがて親の反応を期待しないようにしようとします。最初から求めなければ、少なくても傷つくことはなく、傷つくのを回避できるということで「回避性パーソナルティ障害」と言うそうです。

 

 ちなみに「パーソナルティ障害」というのは、一昔前は「人格障害」という呼び名だったようですが、言葉がきついということで「パーソナルティ」になったようです。呼び方が変わっただけなんですけどね。

 

2 原因(傷つきやすい)

 例えネグレクトで育ったとしても、全員が「めんどくさい病」になるわけではありません。「めんどくさい病」はネグレクトによる深刻な症状のひとつであって、すべてではないのです。

 では、「めんどくさい病」になりやすい子はどういう子なのかと言うと、傷つきやすい子です。前に「叱っても叱っても平気そうな顔をする子」という記事で書いたので、それを読んでいただければ、なんとなく理解できると思います。 

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3 原因(プライドが高い)

 おそらくまだありそうですが、とりあえず最後にします。

 「めんどくさい病」になりやすい子は、完璧で華々しい理想を持っているという事実も押さえておきましょう。これが、突破口になるはずです。

 

 まとめます。

子ども自身は、傷つきやすく、だけど理想を求めている。

子どもを取り巻いた環境は、子どもを無視したか、過剰な期待をかけすぎた。

 簡単に言うと、こんな感じでしょうね。

 長い時間をかけて徐々に培われていくこの状態は、やがて強い自己否定感を育てます。「チャレンジしなければ失敗しない」「周りから馬鹿にされることもない」ということを学習してしまいます。 

 

処方

 これも「絶望病」と同じように、対処は極めて難しいと理解してください。

 ここまでの原因を理解すれば、その回復が極めて困難ということが理解でき、教師にできることも限られてると分かります。教師がその子の担任になったときには、すでに「めんどくさい病」の状態ですから時間がかかります。 

 それでも、できそうな事を書いておきます。

 

1 期待しない。

 期待はすべてプレッシャーです。お膳立てしてもやりません。叱るとやるかもしれませんが、叱る技術がまた難しいのでオススメしません。傷つきやすい子ですからね。

 

2 自分で決めさせる。

 子どもが出す答えに期待しないで、自分で決めさせてください。回復するに従って、良い方向になることを決めるようになりますが、そこまで辛抱できるかという問題があります。時間がかかることを覚悟してください。

 

3 全てを受け止める。

 教師と子どもの信頼関係のことです。「どんな状態でも、先生は君のことを見守っているから大丈夫だよ」というアプローチをかけ続けます。これも難しいんですけどね。

 

4 少しプッシュする。

 何もやりたがらないのですが、少しはプッシュしてください。後押ししないと、永遠にやろうとしませんから。その時に、必ず逃げ道を用意してください。逃げ場があれば、最終的に逃げられるので、安心して取り組めます。

 

5 保護者と話をしてください。

「めんどくさい病」の原因が「ネグレクト」なら、それを生み出したのは家庭です。突然「めんどくさい病」は発症しているように見えるかもしれませんが、そんなことは起こりません。少しずつ、少しずつ培われていくのです。すから、一番の根っこの対応を変えていくのが早いです。ただし、これも超難しいです。「ネグレクト」になってしまったのにもまた、深い理由がありますから。 

 

まとめ

 今回は、あまり救われない内容になってしまいましたが、本当に言いたいことは「極めて困難だから無理」ではありません。

「極めて困難」ではあるのですが、「不可能」ではないと言いたいのです。

 もし、自分のクラスに「めんどくさい病」の子がいたら、

「寄り添われるのもめんどくさい」と言われますが、寄り添ってください。

 そこにしか、突破口はありません。

 どんな子も、本当は光り輝きたいという根本的な願望はありますから。

 

 ただし「めんどくさい病」が悪いってこともないと付け加えておきます。変化に対して臆病ではあるけど、変化しなければ堅実ですから。人畜無害で、周りを巻き込もうとするわけではなく、ただ静かに「めんどくさい病」になっているのです。

 教師としては、子ども達の可能性を広げるために、少しでも挑戦する勇気を持てたらぐらいで接すると良いでしょう。

 挑戦する勇気を持たせる方法は、下の記事が少しは参考になるかもしれません。

 

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