名作漫画である手塚治虫先生の代表作『火の鳥』。その「未来編」を久しぶりに読みました。久しぶりというのはどれぐらい久しぶりかというと、小学生の頃以来なので、およそ35年ぶりぐらいでしょうか。35年も経てば「面白かった」という事実のみを覚えているのであって、具体的な内容などほとんど忘れています。ですから、初めて読むような感覚で読むことができました。
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『火の鳥』は、様々な形で販売されていますが、上に貼り付けた広告の『火の鳥』がオススメです。これは非常に良いということで、何が良いかというと、雑誌連載当時の大きさで復刻されているという点です。大きさはB5サイズです。これは週刊少年ジャンプと同じ大きさなのかな? 調べてないので、正確ではありませが感覚としては同じサイズです。
読後の感想
小学生だった頃にはおそらく全く気づけなかったであろう様々な事が分かり、面白い上に深いというのが全体の感想です。スケールが大きすぎます。
話は未来の地球が舞台で、人類は地下に潜って生活し、世界には7つの都市があるところからスタートします。地下都市に住む人々の会話のページがあるのですが、そんな些細なページですら感慨深いのです。
「今夜テレビで指相撲世界選手権試合があるぞ。」
「ヒャア あれは力が入りますからななあ。」
「うちの子は三ヶ月ですけれど微分積分ができますわ。」
「あーら、うちの子なんか、まだ生まれてませんけど一人でおしっこもできますのよ。」
「わしゃなあ、もう十年もマッサージロボットを使ってるんだ。」
「あなたもですか!私も珍しいゴキブリって虫を飼っているんです。かわいいものですね。」
「こうやってみると、男の服装なんていうのはちっとも進歩していないもんだ。」
いかがでしょうか。こういう発想がもうすでに凄すぎます。
ムーピーという生物がいまして、寿命はおよそ500年です。ムーピーは思考を操ることができるし、どんな形にも変化できるので、動物になったり植物になったり、人間になったりして人類と共生していた時期があります。ムーピーゲームというのが流行し、ムーピーと一緒に、思考を操作してバーチャルな世界を思う存分楽しめる社会になったそうです。これ、現代社会に通じるものがあるような…。ちなみに、これが危険だという事で禁止になっている設定から物語が始まっています。
地下都市では、電子頭脳「ハレルヤ」が全てを決定しており、人間はこの電子頭脳にすべてを計算してもらい、電子頭脳の言うとおりに生活しています。これ、AI技術の進化に通じるものがあるような…。
外の世界には世捨て人である猿田博士が、滅亡した動物たちの復活に関する研究をしています。博士の側には「ロビタ」というロボットが付き添っていますが、ロビタは違う話でも確か主役級で登場していたはずです。
博士はモテないので、女性型ロボットを大量につくりますが、つくづく嫌気がさしてしまいます。人でなければならないのだということですが、これもまた、現代社会に通じるものがあるような…。
やがて、電子図右脳同士が衝突し、世界は大変なことになっていきますが、火の鳥が登場し、主人公を不死身の身体にしてしまいます。ここからがスケールの大きさを改めて実感させられます。不死身の主人公は不死によって苦しむのです。地球上でたった一人の人間になり孤独に苦しんでいくのです。その間、約10000年。
その後、物語は30億年の世界に突入します。もうスケールが大きすぎて、これを昭和の時代に書いたのかと思うと、手塚治虫先生のすごさが身にしみて分かります。手塚先生の発想力は、すでに人ではないのではないでしょうか。
他にもエネルギーや素粒子、宇宙生命について描かれており、どれもこれも奥深い内容です。猿田博士が火の鳥と対話をする名場面がこちらです。
「地球は生きているのですよ。生きものなのですよ。」
「鳥よ‥、何を言う。地球が生きものだと?ふざけたことを‥。」
「地球はあなた方から見れば大きすぎるからよく分からないのも無理はありません。たとえば細菌だってその寄生している生きものの体を生きているとは思わないでしょう。」
こんな凄い対話が至るとこにちりばめられているので、是非読んでみてください。深く考えたい人にお勧めです。考えたくなくてもストーリーとしての面白さがあるので、誰にでもオススメなんですけどね。